『カバーハート』

＠ガラガラガラと引き戸を開ける音。
■私、陽気な感じで。少しアポっぽい感じ。
私「ごめーん。待った？」
■A子、心配せず淡々とした口調。
A子「今日は随分遅かったわね。どうしたの？」
■私、可愛くイライラしている感じ。
私「国語のハゲ山につかまったの。スカートが短いだー。校則の靴下じゃないだー、ホットあいつうるさい」
A子「あなたはいつも格好で個性を出したがるからね。人間大事なのは中身よ中身」
■私、前半は落ち込みながら、後半は口調を少し変えてわかっている風で。
私「顔も頭も良いA子がそれ言うのは卑怯だよ。でも私はA子の中身ちゃぁんと知ってるからねー」
A子「私の中身……？」
■私、からかうように。
私「えーたとえば子供の頃から大事にしているぬいぐるみと一緒じゃないと眠れないとか、下校途中に甘い物買い食いしてるとかぁあ……」
■A子、食い気味に焦って止める。
A子「ちょっとストップストップ！」
私「あらあら学校じゃぁ高嶺の花扱いされてるのにねー」
■A子、吐き捨てるように。
A子「はぁ、あなたに教えるんじゃなかったわ、いいじゃない好きな物は好きなの」
私「えー別にダメって言ってるんじゃないよー。わたしも良いと思うしぃ、そんな可愛いところのあるA子好きだもん」
■A子、淡々とした口調だが内心うれしい。
A子「あらそう？　まぁ、ありがと……」
私「でもさぁ、A子は中身っていうけどやっぱり女の子なんだから見た目も大事じゃない？」
A子「私はどうでもいいわ」
私「まぁA子みたいに素の美人はいいよねー。私みたいな普通な女子は少し着飾るぐらいが丁度良いの」
A子「やり過ぎればピエロよ」
■私、意味が解ってないとぼけた感じ。
私「ピエロ？　それって人気者って意味？」
A子「違うわよ。道化ってこと」
■私、少し考えるがよくわかってない感。
私「うーん……一緒じゃない？」
A子「人を笑わせるのと人に笑われるのは別物よ」
私「でもでもA子だって学校では何重にも猫被ってたじゃん」
A子「あら心外。自己防衛と言って頂戴」
■私、少し引く感じで。
私「うっわぁでたな自己防衛おじさん」
A子「ちょっとネタが古いわよ」
■私とA子の笑い声は被せない。順番で笑わせる。
私「ふふふ」
A子「ふふふ」
私「そういえば今日はさぁ。数学で急にテストがあって最悪だったよぉ」
■A子、心配気味に言う。
A子「抜き打ち？　常日頃から勉強していればどうってことないわよ？」
■私、駄々をこねる感じで。
私「してるもん。それでも難しかったのー」
A子「ホントかしら。後で問題見せて」
私「わかった。でもいいよねーA子は今日も学校休みなんだからさぁ」
■A子、イヤそうに。
A子「私だって行きたくなくていかないわけじゃないわよ。それに……」
■私、食い気味に言う。
私「彼氏さんもいるしね」
■A子、驚いた様子はなく淡々と。
A子「あら知ってたの？」
■私、不気味な感じで笑う。
私「ふふふ、私に隠し事なんてずるいよぉ。A子の様子を見てたらわかるよ」
A子「…………」
私「早く会いたい？」
A子「まぁ難しいでしょうね」
私「だよね。だって私に黙って彼氏作るA子が悪いんだからね」
■A子、怒り気味に。
A子「何よ。そんなの私の勝手でしょ」
私「あー、私にそんな態度とるんだ」
■A子、「べつに」まではA子の声、咳払いからゆっくりと私になる。
A子「べつに…ゲホッゲホッ」
■私、達観した声で
私「あーあ、A子の声低いから出しずらいなぁ」
A子「…………」（※死体）
■私、当たり前のようにいう。
私「いつまでも過去を恋愛引きずってても仕方ないか。新しい恋さーがそっと」
私「じゃあねA子、チュ（リップ音）」
私「腐る前にちゃぁんと彼氏と一緒に埋めて上げるから」
＠遠のく足音
＠ガラガラガラと引き戸を締める音

【A子は最初から死体で私が声色を変えながら二人を演じて遊んでいる】

END